聖クルアーン
トップ » 聖クルアーン » アル・ジン(幽精)
本章名は,聖預言者の教えを,あるジンたちが信奉したことが記されるにちなみ名付けられる。この事件はヒジュラの2年前のことである。当時かれを保護してきた伯父のアブー・ターリブも愛妻のハディージャも死去し,マッカ市民の迫害は,激しさを増しもはや居住に耐え難くなって,信徒の第2次のアビシニア移住も,強行させねばならぬほどになり,かれはマッカから東方100キロの所にある,今日夏季の首都として有名なターイフに,布教の地を求めて赴いた。しかしそこでも非常な虐待を被り命からから脱出して,マッカヘ帰る途上で本章は啓示されたといわれる。すなわち無援の窮地に陥った時でも,目に見えぬ隅れた力,アッラーの加護がある示唆である。それから2ヶ月もたたぬ)ちに,アル・マディーナから数名の未知の者が来て,聖預言者に面会して聖遷〔ヒジュラ〕の基礎が確立され,アラビアの運命ならびに世界史を変える端緒となった。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。  
言え,「わたしにこう啓示された。一団のジンが(クルアーンを)聞いて言った。『わたしたちは,本当に驚くべき読誦を聞いた。1
   
正しい道への導きである。だからわたしたちは信仰し,主に何ものをも配さない。2
   
尊厳にしていと高き主の御威光よ,かれは妻を娶らず,子も持たれない。3
   
わたしたちの中の愚かな者が,アッラーに対し途方もない嘘を話していた。4
   
しかしわたしたちは,人間もジンも,アッラーに就いて嘘を言うべきではないと考えていた。5
   
本当に或る種の人間は,ジンの或る者に庇護を求める。しかしそれは,かれらの愚劣を助長した。6
   
かれらもあなたがたが考えたように,アッラーは,何者も甦らされないだろうと考えていた。7
   
わたしたちは,天(の秘密)に触れようとしたが,これは強い護衛の燃え輝く星(流星)で一杯であることが分った。8
   
わたしたちは(盗み)聞くためにそこに坐っていた。だが聞き耳を立てる者には,警戒している燃え輝く星(流星)が待ち構えている。9
   
わたしたちは,主が地上の者に対して悪を望まれているのか,または,かれらを正しい道に,導くことを望まれているのか知らなかった。10
   
わたしたちの中には,正しい者もいるが,そうではない者もいて,様々な道に従っている。11
   
だがわたしたちは,地上においてアッラーを出し抜くことは出来ないし,また逃避して,かれを失敗させることも出来ないと思っている。12
   
わたしたちは導きを聴いて,直ぐそれを信仰した。そして主を信じる者には,恐れもなく,損うこともなく,また不正にあうこともない。13
   
わたしたちの中には,(アッラーに)服従,帰依する者もあり,また正道から逸れる者もいる。服従,帰依した者は正しい道に志向を定める。14
   
だが正道から逸れる者は火獄の薪となろう。』と。」15
   
もしかれらが(正しい)道を守るならば,われは必ず豊かな雨(凡ての恩恵)をかれらに恵む。16
   
われはそれによってかれらを試みよう。だが主を念うことから逸れる者は,厳しい懲罰に追いたてられることになる。17
   
本当にマスジドは(凡て)アッラーの有である。それでアッラーと同位に配して他の者に祈ってはならない。18
   
アッラーのしもべ(ムハンマド)が,かれに祈るために立った時,かれら(マッカの多神教徒)はどっと押し寄せんばかりに,かれを取り巻いた。19
   
言ってやるがいい。「わたしは,一途にわが主に祈り,何もかれと同位に配さない。」20
   
言ってやるがいい。「わたしには,あなたがたを害したり,益したりする力はないのである。」21
   
言ってやるがいい。「誰もアッラーからわたしを守り切ることは出来ないし,またかれの外に,避難所を見い出すことも出来ない。22
   
(わたしは)只アッラーからの御告げを,宣べ伝えるに過ぎない。それでアッラーとその使徒に従わない者,かれらには地獄の火があり,永遠にその中に住むであろう。」23
   
かれらは,約束されたことを見る時になって,助力において誰が最も頼りにならないか,数においても誰が最も頼りにならないかを知るであろう。24
   
言ってやるがいい。「わたしは,あなたがたに約束されたことが近付いているのか,それともアッラーがもう少し期間を設けられたのかを知らない。25
   
かれ(だけ)が幽玄界を知っておられ,その秘密を誰にも漏されはしない。26
   
かれの御気に召した使徒以外には。それで,かれは,前からも後ろからも護衛して,(使徒を)赴かせられた。27
   
それはかれらが,果して主の御告げを伝えたかどうかをかれが知られるためであり,またかれらの持つものを取り囲んで,凡てをそれぞれ計算に数え上げられるためである。28