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本章は,預言者の昇天の出来事をもって始められ,個人的立場よりも,むしろ民族的立場から精神面の変遷進化について述べられ,以下この主題によって29章まで一貫して教えられる。これまでのクルアーンの教えを回顧すると,最初の7章においては,人間初期の精神史が概説されイスラーム共同体の形成に及んだが,次の3章から16章においては,共同体とその強化に関する教えであった。本章以下では諸預言者の物語も,もっばら集団的立場に重点がおかれている。さらに22章から25章では,それが敬神,礼拝,巡礼,喜捨,私生活などに関連して人間の精神生活の向上につき述べられる。また26章から29章においては,個人の共同体生活に対する反発と,個人の精神面に対するウンマの反動力とによる,個人の魂の成長に関し教えられる。 さて本章冒頭の聖預言者ムハンマドの夜の旅は,聖遷〔ヒジュラ〕前年の7月27日の夜,マッカの聖なるマスジドから,天馬に乗ってエルサレムのマスジドに至り,そこから昇天〔ミァラージュ〕第1天においてアーダムに会い,第2天ではヤヒヤー,イーサーに,第3天ではユースフに,第4天でイスハーク,第5天でハールーン,第6天でムーサー,第7天ではイブラーヒームに会った。その案内役の天使ジブリールは,それから先に進むことを許されなかったが,聖預言者はさらに進んで荘厳な主の玉座に達して親しく御言葉を賜わり,1日に5回の礼拝をささげることにつき,御赦しをえたといわれる。 また両親と子女間の正しい互恵的あり方,世人に対する懇切,異常な事態に対処する勇気と堅固さ,個人的責任の自覚,礼拝と唱念により不断にアッラーの御前にあるような感覚の(温?)養などにつき教えられる。本章の啓示の時代は,前記のように昇天がヒジュラの前年であるところから明らかであるが,一部分の節はそれよりも以前に啓示されたもののようである。 内容の概説 第1−22節,アッラーの使徒の精神的体験によリアッラーのしるしを人びとに判明させ,イスラエルの民の陥った運命に顧み,各自の責任の自覚が促される。第23−40節,アッラーヘの奉仕は,両親に対する孝行,子供や近親への親切,性関係の貞潔,対人関係の公正尊重,孤児の保護,取引上における廉正,高慢の回避などの人間関係を通じて教えられる。第41−60節,アッラーの栄光はあらゆる信心深い者の上に下る。アッラーの啓示を受け入れることにより不信心から遠ぎかることになり,アッラーは万人を取り囲まれるために,信者は公正に言行し不和を避ける。第61−84節,誇りはイブリースを堕落させたが,アーダムの子ら(人間)は,あらゆる創造物の上に卓越するものとされた。人間はその行いによって審判される。クルアーンは信者にとっては精神的な(癒?)し,慈悲として授けられたものである。第85―111節,クルアーンによる神託はアッラーの恩恵のしるしである。人びとは素直にそれを受け入れ,謙虚に礼拝し譲えろべきである。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。  
かれに栄光あれ。そのしもべを,(マッカの)聖なるマスジドから,われが周囲を祝福した至遠の(エルサレムの)マスジドに,夜間,旅をさせた。わが種々の印をかれ(ムハンマド)に示すためである。本当にかれこそは全聴にして全視であられる。1
   
われはムーサーに啓典を授け,イスラエルの子孫ヘの導きとさせ(命じ)た。「われの外に守護者を持ってはならない。」,2
   
われがヌーフと一緒に(方舟で)運んだ者の子孫よ。本当にかれは感謝するしもベであった。3
   
またわれは啓典の中で,イスラエルの子孫に対しこう啓示を与えた。「あなたがたは必ず地上で2度悪を犯し,必ず甚だしく高慢に思いあがるであろう。」4
   
それで2つの中最初の時(預言)が来た時,われはしもべの中の武勇に富んだ者を,あなたがたに遣わし,かれらは家々の最も奥に入り,約束は成し遂げられた。5
   
次いでわれは,あなたがたがかれらに勝利を得るようにし,またあなたがたの財産と子女を増やして多くの人々とした。6
   
(そして仰せられた。)「もしあなたがたが善を行うなら,自分の身のために善を行うのであり,また悪を行っても,自分のため(に行うの)である。」それで2番目の時が来た時,あなたがたの顔は曇り,最初の時のように,かれらはマスジドに侵入し,凡てはかれらによって徹底して踏み躙られ壊滅に帰した。7
   
或るいは主もあなたがたに情けを与えるであろう。だがあなたがたが(罪を)繰り返すならば,われも(懲罰を)繰り返すであろう。われは不信者のために,地獄を牢獄として設けた。8
   
本当にこのクルアーンは,正しい(道への)導きであり,また善い行いをする信者への吉報である。かれらには偉大な報奨が授けられる。9
   
また来世を信じない者には,われはかれらのために痛ましい懲罰を準備した。10
   
人間の祈りは幸福のためであるべきなのに,かれは災厄のために祈る。凡そ人間はいつも性急である。11
   
われは夜と昼の2つの印を設け,夜の印を暗くした。だが昼の印は明るくして,あなたがたに(働いて)主の恩恵を祈らせ,また年数を知り,(暦法を)計算させる。われは凡てのことを詳細に説き明かした。12
   
一人びとりに,われはその運命を首に結び付けた。そして復活の日には,(行いの)記録された一巻が突き付けられ,かれは開いて見る。13
   
(かれは仰せられよう。)「あなたがたの記録を読みなさい。今日こそは,あなた自身が自分の精算者である」14
   
誰でも導かれる者は,只自分の魂を益するために導かれ,また誰でも迷う者は,只自分を損うために迷う。重荷を負う者は,他人の重荷を負うことは出来ない。われは(警告のため)一人の使徒を遣わさない限り決して懲罰を下さない。15
   
われが一つの町を滅ぼそうとする時は,かれらの中で裕福に生活し,そこで罪を犯している者に(先ず)命令を下し,言葉(の真実)がかれらに確認されて,それからわれはそれを徹底的に壊滅する。16
   
ヌーフの後,如何に多くの世代を,われは滅ぼしたことであろうか。あなたの主は,そのしもべたちのいろいろな罪を知っておられ,見ておられる方として万全である。17
   
誰でも束の間(のこの世の事物)を望む者には,われも急いでかれのために,われの欲する物をわれが望む者に与える。それからかれのために地獄を準備する。かれはそこで焼かれ,恥辱を被り,(慈悲を)拒否されるであろう。18
   
しかし誰でも来世を望み,それに向かい精出し努力し,信仰する者,これらの者の努力は嘉納される。19
   
われは凡ての者に,これらの者にもまたかれらにも,あなたの主の賜物を広く授ける。あなたの主の賜物には限界はないのである。20
   
見なさい。われはある者に,如何に外よりも優れた恩恵を与えるかを。しかし来世では,必ずもっと大きい等級や偉大な特典がある。21
   
アッラーと一緒に外の神を立ててはならない。さもないと,あなたがたは軽蔑され見捨てられるであろう。22
   
あなたの主は命じられる。かれの外何者をも崇拝してはならない。また両親に孝行しなさい。もし両親かまたそのどちらかが,あなたと一緒にいて老齢に達しても,かれらに「ちえっ」とか荒い言葉を使わず,親切な言葉で話しなさい。23
   
そして敬愛の情を込め,両親に対し謙虚に翼を低く垂れ(優しくし)て,「主よ,幼少の頃,わたしを愛育してくれたように,2人の上に御慈悲を御授け下さい。」と(折りを)言うがいい。24
   
主はあなたがたの心の中に抱くことを熟知なされる。もしあなたがたが正しい行いをするならば,かれは悔悟して度々(主に)返る者に対し,本当に寛容である。25
   
近親者に,当然与えるべきものは与えなさい。また貧者や旅人にも。だが粗末に浪費してはならない。26
   
浪費者は本当に悪魔の兄弟である。悪魔は主に対し恩を忘れる。27
   
あなたは主からの慈悲を詰い願うために,仮令かれらから遠ざかっていても,あなたはかれらに対し優しく語りなさい。28
   
あなたの手を,自分の首に縛り付けてはならない。また限界を越え極端に手を開き,恥辱を被り困窮に陥ってはならない。29
   
本当にあなたの主は,御心に適う者への報酬を豊かにされ,また控えられる。かれはそのしもべに関し,本当に全知にして全視であられる。30
   
貧困を恐れてあなたがたの子女を殺してはならない。われはかれらとあなたがたのために給養する。かれらを殺すのは,本当に大罪である。31
   
私通(の危険)に近付いてはならない。それは醜行である。憎むべき道である。32
   
正当な理由による以外は,アッラーが尊いものとされた生命を奪ってはならない。誰でも不当に殺害されたならば,われはその相続者に賠償または報復を求める権利を与える。殺害に関して法を越えさせてはならない。本当にかれは(法によって)救護されているのである。33
   
孤児が力量(ある年齢)に達するまでは,最善(の管理)をなすための外,かれの財産に近付いてはならない。約束を果たしなさい。凡ての約束は,(審判の日)尋問されるのである。34
   
それからあなたがたが計量する時は,(買い手のために)その量を十分にしなさい。また正しい秤で計りなさい。それは立派であり,その方が結果として最良になる。35
   
またあなたは,自分の知識のないことに従ってはならない。本当に聴覚,視覚,また心の働きの凡てが(審判の日において)尋問されるであろう。36
   
また横柄に地上を歩いてはならない。あなたがたは大地を裂くことも出来ず,また(背丈が)山の高さにもなれない。37
   
これらの凡ては悪事で,あなたの主は,これを憎まれる。38
   
これらは,主があなたに啓示された英知である。アッラーと一緒に外の神を立ててはならない。そうでないと恥辱を受け(慈悲を)拒否され地獄に投げ込まれるであろう。39
   
(多神教徒よ)主は男児をあなたがたに授け,(御自分は)天使の中から女児を取られたとするのか。本当にあなたがたは由々しき言葉を口にする者である。40
   
本当にわれはこのクルアーンで,かれらを戒しめるために繰り返し説いた。しかしそれは,只かれらの(真理からの)離反を加えるだけであった。41
   
言ってやるがいい。「もしかれらの言うように,アッラーの外に(外の)神があるならば,それらは必ず玉座の主への道を熱望したであろう。」42
   
かれに讃えあれ,かれはかれらが唱えるものの上に高くおられる。崇高にして偉大な御方であられる。43
   
7つの天と大地,またその間にある凡てのものは,かれを讃える。何ものも,かれを讃えて唱念しないものはない。だがあなたがたは,それらが如何に唱念しているかを理解しない。本当にかれは忍耐強く寛容であられる。44
   
あなたがクルアーンを読唱する時,われはあなたと来世を信じない者との間に,見えない幕を垂れる。45
   
またわれは,かれらがそれを理解しないように,その心に覆いを掛け,耳を鈍くした。それであなたがクルアーンの中で,あなたの主,かれだけを語る時,かれらは(真理を)嫌って背を向ける。46
   
われは,かれらが聞きに来る時どんな(考え)であなたに聞くかを知っている。そしてかれらが密に話合う時,不義の徒は,「あなたがたは,只(ぶ?)かれた一人の人間に,従っているに過ぎないのです。」と言う。47
   
かれらがあなたに対し,どんな例を挙げるかを見るがいい。かれらは迷い去っている。決して道を見い出せないであろう。48
   
かれらは言う。「わたしたちが骨になり砕けた土になった後,本当に新たな生き物として甦るのでしょうか。」49
   
言ってやろがいい。「あなたがたが石になり,また鉄になっても,50
   
またあなたがたの胸の中で考えられるものでも。」その時,「誰がわたしたちを甦らせるのでしょうか。」と言う。言ってやるがいい。「最初にあなたがたを創られた方である。」それでかれらはあなたに向って頭を振り,「それは何時でしょうか。」と言う。言ってやるがいい。「それは恐らく近いであろう。51
   
その日かれは,あなたがたを呼び出される。その時あなたがたは答え,かれを讃える。またあなたがたが(墓の中に)留まったのは,片時に過ぎないと思うであろう。」52
   
われのしもべに告げなさい。「かれら(ムスリム)は何事でも最も丁重に物を言いなさい。」悪魔は,かれら(不信者)との間に(紛争の)種を蒔く。本当に悪魔は人間の公然の敵である。53
   
あなたの主は,よくあなたを知っておられる。もしかれの御心ならば,あなたがたに慈悲を与えられ,またかれの御心ならば罰される。われは,かれら(不信者)のための後見人として,あなたを遺わしたのではない。54
   
あなたの主は,天と地にある凡てのことを最もよく知っておられる。われは預言者たちの中のある者に,外の者以上の恵みを施し,またダーウードには詩篇を授けた。55
   
言ってやるがいい。「かれを差し置いて,あなたがたが考えている(神々)を呼ベ。かれらはあなたがたから災厄を除く力もなく,またそれを変えることも出来ない。」56
   
かれらが祈っている神々できえ,主に接近することを願っている。誰が最もアッラーの喜びに近づけるのかと。なお,側近にいるものでも,かれの慈悲を待望し,懲罰を恐れている。本当に主の懲罰こそ,用心すべきである。57
   
如何なる町でも,われは審判の日以前にそれを滅ぼし,または痛烈な刑で処罰する。それは,(わが不滅の)啓典に印されている。58
   
われが印を下すことを控えるのは,昔の民がそれを偽りであるとしたからに外ならない。われは以前サムードに,明らかな印の雌ラクダを授けたが,かれらはそれを迫害した。われが印を下すのは,只畏れの念を抱かせるために外ならない。59
   
われが以前あなたに向かって,「あなたの主は本当に人間を取り囲まれる。」と言った時を思いなさい。われがあなたに見せたものは,人びとに対する一つの試みに過ぎなかった。またクルアーンの中で呪われたあの木も(そうである)。われは畏れ(や警告)を与えるのだが,かれらは只大逆を増すばかりである。60
   
われが天使たちに,「アーダムにサジダしなさい。」と告げた時を思え。その時イブリース以外はサジダした。かれは言った。「あなたが泥で創られた者に,どうしてサジダしましょうか。」と言った。61
   
かれは(また),「あなたは御考えになりませんか,あなたはこの者をわたしよりも重視されます。だがもし復活の日まで,わたしに猶予を下さるなら,僅かの者を除き,かれの子孫を必ずわたしの配下に致しましょう。」と言った。62
   
かれは仰せられた。「去れ。もしかれらの中あなたに従う者があれば,本当に地獄こそあなたがた(一味)への応報,十分な応報である。63
   
あなたの(魅惑的な)声でかれらの中の出来る限りの者を動揺させ,あなたの騎兵や歩兵でかれらを攻撃しなさい。かれらの財産や子供つくりに協力し,うまそうな約束を結ベ。」だが悪魔の約束は,欺瞞に過ぎない。64
   
「あなたは,われのしもベに対して何の権威も持たない。」あなたの主は,信頼する方として万全である。65
   
主こそは船をあなたがたのため海に航行させ,かれの恩恵を求めさせる方である。本当にかれは,あなたがたに対しいつも慈悲深くあられる。66
   
あなたがたが海上で災難にあうと,かれ以外にあなたがたが祈るものは見捨てる。だがかれが陸に救って下さると,あなたがたは背き去る。人間はいつも恩を忘れる。67
   
あなたがたは,かれが地の果てであなたがたを呑み込まれないと安心出来るのか。またあなたがたに対して,(秒石の雨を伴う)旋風を送られないと。その時あなたがたのためには保護者はいないのである。68
   
または,かれが再びあなたがたをそれ(海上)に戻らせ,あなたがたが恩を忘れたために風を起こし暴風を送り,溺れさせないと安心出来るのか。その時あなたがたは,われに反抗する救助者を発見することは出来ないのである。69
   
われはアーダムの子孫を重んじて海陸にかれらを運び,また種々の良い(暮らし向きのための)ものを支給し,またわれが創造した多くの優れたものの上に,かれらを優越させたのである。70
   
その日われは凡ての人間を,その導師と共に(審判のため)召集する。右手に自分の記録を波される者は,(喜びと満足をもって)その記録を読む。かれらは少しも不当に遇せられないであろう。71
   
しかし現世でこれを見られなかった者は,来世でも見られないであろう。そしてますます道から迷い去る。72
   
かれらは,われがあなたに啓示したものからあなたを扇動して背かせようとし,別のものをわれに対してねつぞうさせようとしている。そのとおりにした場合,かれらはあなたを仲間にしたであろう。73
   
もしわれがあなたを確りさせていなかったならば,先にあなたはかれらに少し傾きかけていた。74
   
その場合われはあなたの(この世の)生活で2倍,また死んでから(来世で)2倍の(懲罰)を味わわせ,あなたはわれに対し援助者を見い出せないであろう。75
   
かれらはあなたをこの地(マッカ)から追放しようとして,凡んど居佳に耐えられないようにしている。だがそうなれば,あなたの後かれらも,暫時の外(そこに)留まれないであろう。76
   
あなた以前に遺わした使徒たちに対する(わが)慣行は(皆,こう)であった。あなたはわが慣行に変化を見い出すことは出来ない。77
   
太陽が(中天を過ぎ)傾く時から夜のとばりが降りるまで,礼拝の務めを守り,また暁には礼拝をしなさい。本当に暁の礼拝には立会人がいる。78
   
また夜の或る時間を起きて礼拝を務めれば,あなたのために余分の賜物があろう。主はあなたを,光栄ある地位に就かせて下される。79
   
(祈って)言え,「主よ,わたしを正しい入り方で入らせ,また正しい出方で出させ,あなたの御許から,助けとなる権威をわたしに授けて下さい。」80
   
言え,「(今や)真理は下り,虚偽は消え去りました。本当に虚偽は常に消える定めにあります。」81
   
われが(段階を追って)クルアーンで下したものは,信者にとっては(精神的な)(癒?)しであり慈悲である。だが不義の徒にとっては只損失の種である。82
   
われが恩恵を施せば,かれは背き去って遠ざかり,災厄が襲えば,絶望してしまう。83
   
言ってやるがいい。「各人は自分の仕方によって行動する。だがあなたがたの主は,誰が正しく導かれた者であるかを最もよく知っておられる。」84
   
かれらは聖霊に就いてあなたに問うであろう。言ってやるがいい。「聖霊は主の命令によ(って来)る。(人びとよ)あなたがたの授かった知識は微少に過ぎない。」85
   
かれがもし望むならば,あなたに啓示したものを取り上げることも出来る。その時それに就いて,われに逆らってあなたを弁護する者を見い出さないであろう。86
   
只あなたの主からの慈悲は別で。あなたに対するかれの恩恵は,本当に広大である。87
   
言ってやるがいい。「仮令人間とジンが一緒になって,このクルアーンと同じようなものを(西?)そうと協力しても,(到底)このようなものを(強?)すことは出来ない。」88
   
われはクルアーンの中で,種々の比(輪?)を挙げて人びとに説明した。それでも人びとの多くは,不信心一筋に(その受け入れを)拒否する。89
   
かれらは言う。「わたしたちのために,あなたが地から泉を涌き出させるまでは,あなたを信じないであろう。90
   
またはあなたがナツメヤシやブドウの園を所有し,その間を通って豊かに川を流れさすまでは。91
   
またはあなたが(あり得ると)言明したように,大空を粉ごなにしてわたしたちに落すまで。またアッラーそして天使たちを,(わたしたちの)面前に連れて来るまで。92
   
またはあなたが,黄金(の装飾)の家を持ち,(梯子を踏んで)天に登るまでは。いや,わたしたちに読める啓典を持って下るまで,あなたの昇天をも信じないであろう。」言ってやるがいい。「主に讃えあれ,わたしは使徒として(遺わされた)一人の人間に過ぎないではないか。」93
   
導きがかれらに下された時,人びとの信心を妨げたのは,かれらが,「アッラーは(わたしたちと同じ)一人の人間を,使徒として遺わされたのか。」と言った(こと)に外ならない。94
   
言ってやるがいい。「もし地上を悠々と往き来しているのが天使なら,われはきっと一天使を使徒として,天からかれらに遺わしたことであろう。」95
   
言ってやるがいい。「アッラーは,わたしとあなたがたとの間の立証者として万全であられる。本当にかれは,そのしもべたちを知り尽くし,見ておられる方である。」96
   
アッラーの導かれる者こそ,導かれた者である。だがかれが迷うに任せた者に対しては,かれの外には決して保護者がないことを,あなたは知るであろう。われは復活の日に,かれらの顔を俯けにして召集する。見えない者,物言えない者,聞こえない者として。かれらの住まいは地獄である。そして(火勢が)衰える度にわれはかれらのために烈火を加える。97
   
これはかれらが,わが印を信じない応報である。かれらはまた言う。「わたしたちが骨と砕けた土になった後,本当に新たな生き者として甦るのでしょうか。」98
   
かれらは,天と地を創造されたアッラーが,かれらと同じようなものを,創ることが出来るのが分らないのか。またかれらのために,かれは一期限を定められた。それに疑いの余地はないのである。それでも不義の徒は,不信心一筋に(その受け入れを)拒否する。99
   
言ってやるがいい。「仮令わたしの主の慈悲の宝物があなたがたの手中にあっても,それを費やすことを恐れて,あなたがたは必ず仕舞込むことであろう。」人間は常に吝嗇である。100
   
本当にわれはムーサーに9つの明証を授けた。イスラエルの子孫に聞け,かれ(ムーサー)がかれらのもとに来た時フィルアウンは,「ムーサーよ,わたしはあなたを(ほ?)かれた者であると思う。」と言った。101
   
かれは言った。「あなたはこれら(印)を,証拠として下された方が,天と地の主に外ならないことを知っています。フィルアウンよ,本当にあなたは破滅する運命にあるとわたしは考えます。」102
   
そこでかれ(フィルアウン)はかれらを国外に追放しようとした。だがわれはかれ(フィルアウン)そしてかれに従う者を,一斉に溺れさせた。103
   
われはその後,イスラエルの子孫たちに言った。「この地に住み着きなさい。だが来世の約束が来る時,われはあなたがたを鳥合の衆にするであろう。」104
   
われはこの(クルアーン)を真理をもって下したので,それは真理によって下った。そしてわれは,吉報の伝達者,または警告者としてあなたを遣わしただけである。105
   
(これは)われが分割(して啓示)したクルアーンであり,あなた(預言者)にゆっくりと人びとに読唱するために,必要に応じてこれを啓示した。106
   
言ってやるがいい。「あなたがたがこの(クルアーン)を信じても,また信じなくても,以前に知識を与えられた者たちは,読誦を耳にすると,必ずその顔を伏せてサジダする。107
   
そして(祈って),『わたしたちの主の栄光を讃えます。本当に主の御約束は果たされました。』と言う。」108
   
かれらは涙を流して顔を地に伏せ,謙譲の誠を募らせる。〔サジダ〕109
   
言ってやるがいい。「アッラーに祈れ。慈悲深い御方に祈りなさい。どの御名でかれに祈ろうとも,最も美しい御名は,凡てかれに属する。」礼拝の折には,声高に唱えてはならない。また(余り)低く唱えてもいけない。その中間の道をとれ。110
   
また言ってやるがいい。「アッラーに譲えあれ。かれは子を持たれない御方。また(かれの)大権には共有者もない御方。また(かれは)不面目な支援者(それは被創造物だから)を持たない御方であられる。(アッラーは完全自足者であられる)。」かれの偉大さ(栄光)を讃えなさい。111