トップ » 聖クルアーン » 星 (アン・ナジュム)
本章名は,第1節の「沈みゆく星」の語にちなみ名付けられる。マッカ時代の初期の啓示とされる。第56章の序説に記るした7つの章のうちの第4番目の章で,啓示は妄想ではなく,啓示を懐疑して邪神を崇拝する者の心に宿るものである。アッラーは万有の本源であられ,また帰り着く所である。このことは,聖預言者こそ卓越した存在であり,すべてを克服するに至ることの示唆である。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
沈みゆく星にかけて(誓う)。1
あなたがたの同僚は,迷っているのではなく,また間違っているのでもない。2
また(自分の)望むことを言っているのでもない。3
それはかれに啓示された,御告げに外ならない。4
ならびない偉力の持主が,かれに教えたのは,5
優れた知力の持主である。真っ直ぐに立って,6
かれは地平の最も高い所に現われた。7
それから降りて来て,近付いた。8
凡そ弓2つ,いやそれよりも近い距離であったか。た。9
そしてしもべ(ムハンマド)に,かれの啓示を告げた。10
心は自分が見たことを偽らない。11
かれの見たことに就いて,あなたがたはかれと論争するのか。12
本当にかれ(ムハンマド)は,再度の降下においても,かれ(ジブリール)を見たのである。13
(誰も越せない)涯にある,スィドラ木の傍で。14
そのそばに終の住まいの楽園がある。15
覆うものがスィドラ木をこんもりと覆う時。16
(かれの)視線は吸い寄せられ,また(不躾に)度を過ごすこともない。17
かれは確かに,主の最大の印を見たのである。18
あなたがたは,アッラートとウッザーを(何であると)考えるか。19
それから第3番目のマナートを。20
あなたがたには男子があり,かれには女子があるというのか。21
それでは,本当に不当な分け方であろう。22
それらは,あなたがたや祖先たちが名付けた(只の)名前に過ぎない。アッラーは(どんな)権威をも,それらに下されなかった。かれら(不信心者)は,虚しい臆測や私慾に従っているに過ぎない。既に主からの導きが,かれらに来ているのに。23
凡そ人間には,欲しいものは何でも手にはいるのか。24
いや,来世も現世も,アッラーの有である。25
天に如何に天使がいても,アッラーが望まれ,その御喜びにあずかる者にたいする御許しがでた後でなければ,かれら(天使)の執り成しは何の役にも立たない。26
本当に来世を信じない者は,天使に女性の名を付けたりする。27
かれらは(何の)知識もなく,臆測に従うだけである。だが真理に対しては,臆測など何も役立つ訳はない。28
それであなたはわれの訓戒に背を向ける者,またこの世の生活しか望まない者から遠ざかれ。29
この程度(現世の生活)が,かれらの知識の届く限界である。本当に主は,道から迷っている者を最もよく知っておられる。またかれは,導きを受ける者を最もよく知っておられる。30
本当に天にあり地にある凡てのものは,アッラーの有である。だから悪行の徒には相応しい報いを与えられ,また善行の徒には最善のもので報われる。31
小さい誤ちは別として,大罪や破廉恥な行為を避ける者には,主の容赦は本当に広大である。かれは大地から創り出された時のあなたがたに就いて,また,あなたがたが母の胎内に潜んでいた時のあなたがたに就いて,最もよく知っておられる。だから,あなたがたは自分で清浄ぶってはならない。かれは主を畏れる者を最もよく知っておられる。32
あなたは(真理から)背き去る者を見たか。33
僅かに施しをしては,(物借みして)止める。34
そういう者に幽玄界の知識があって,それで何でも見えるというのか。35
それとも,ムーサーの書にあることが,告げられたことはないのか。36
また(約束を)完全に果たしたイブラーヒームのことも。37
重荷を負う者は,他人の重荷を負うことは出来ない。38
人間は,その努力したもの以外,何も得ることは出来ない。39
その努力(の成果)は,やがて認められるであろう。40
やがて報奨は,十分に報いられる。41
本当にあなたの主にこそ,帰着所はある。42
かれこそは,笑わせ泣かせる御方。43
また死なせ,生かす御方である。44
本当にかれは,男と女の組み合わせを創られた。45
それも精液を吹き込むことで。46
また2度目の創造(の復活)も,かれの御心のままである。47
かれこそは富ませ,また満ち足りさせる御方。48
また狼星(シリウス)の主もこの御方。49
かれは昔アード(の民)を滅ぼし。50
またサムードも一人残さず滅ぼされた。51
それ以前にヌーフの民も。本当にかれらは,酷い不義,不正の輩であった。52
また(ソドムとゴモラのように)転覆された諸都市。53
そしてかれはそれを覆い去られた。54
(人びとよ,)一体主のどの御恵みに,あなたがたは異論を抱くのか。55
これは,昔の警告者たちと同じ一人の警告者である。56
(審判の時は)近くに迫って来ている。57
それはアッラーの外何者も明らかにし得えない。58
あなたがたはこの話を聞いて驚いているのか。59
嘲笑はしても,泣かないのか。60
あなたがたは,自惚の中で時を過ごすのか。61
一途にアッラーにサジダし,(かれに)仕えなさい。〔サシダ〕62