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本章は第1節の,当時アラブにおいては力の象徴であった月の語にちなんで月章と名付けられる。マッカ時代初期の啓示である。啓示の真実と審判について取扱われている,7つの一群のうちの第5番目の章で,月は微塵に裂かれたの語が示唆するように,真理と正義に反抗するクライシュ族の勢力は,破滅の外はないことが説かれる。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。  
時は近づき,月は微塵に裂けた。1
   
かれらは仮令印を見ても,背き去つて,「これは相変らずの魔術だ。」と言うであろう。2
   
かれらは(訓戒を)虚偽であるとし,自分の欲望に従ってきた。だが一切の事には,定められた結末がある。3
   
これまで,様々な消息は,既に(宙?)され,それで充分自制出来たはず。4
   
それはめざましい英知であった。だが警告は役立たなかった。5
   
だからあなたは,かれらから遠ざかれ。召集者が嫌われるところへ呼び出す日。6
   
かれらは目を伏せて,丁度バッタが散らばるように墓場から出て来て,7
   
召集者の方に急ぐ。不信心者たちは言う。「これは大難の日です。」8
   
かれら以前に,ヌーフの民も(その預言者を)虚偽とし,わがしもべを嘘付き呼ばわりし,「気違いです。」と言って追放した。9
   
それでかれは主に,「わたしは,本当に力尽きました。どうか御助け下さい。」と祈った。10
   
それでわれは,天の諸門を開き水を注ぎ降らせた。11
   
また大地に諸泉を噴出させ,水は合わさり,かねての神命によること(洪水)が起きた。12
   
しかしわれは板と釘で造ったもの(方舟)にかれを乗せてやった。13
   
わが見守る中でそれは走った。これが(皆から)退けられたあの者への報いである。14
   
われはこれを一つの印として残した。さて誰か悟ろ者はあるか。15
   
さあわが懲罰と戒めとはどうであったか。16
   
本当にわれは,クルアーンを易しく説き明した。さあ,誰か悟る者があるか。17
   
アード(の民)も(真理を)虚偽であるとした。それでわが懲罰と戒めとはどうであったか。18
   
われは災厄の打ち続く日に,かれらに対し荒れ狂う風を送った。19
   
すると人間は,根こそぎになった。ナツメヤンの切り株のように,むしり去られた。20
   
あの時のわが懲罰と戒めとはどうであったか。21
   
誠にわれは,クルアーンを易しく説き明かした。さて,誰か悟る者があるか。22
   
サムード(もまた)警告を虚偽であるとした。23
   
そしてかれらは言った。「何と,わたしたちの中の一介の人間ではないですか。どうしてこんな者に従いますか。それこそ邪道,気違い沙汰です。24
   
わたしたちの間でかれだけに啓示が下されたのですか。いや,かれは大嘘付きです。」25
   
(仰せられた。)「かれらは明日知るであろう。どちらが大嘘付きであるかを。26
   
本当にわれは,かれらを試みるため雌ラクダを送るであろう。あなたは耐え忍びかれらを見守れ。27
   
そしてかれらにラクダと水を分配し,順番に飲むよう伝えなさい。28
   
だがかれらは仲間を呼び寄せ,その男は(剣を)手にとると膝の腱を切ってしまった。29
   
その時のわが懲罰と戒めとがどうであったか。30
   
本当にわれは,かれらに向っかて(耳をつんざく)一声を下すと,かれらは家畜の囲いに使われる枯れ株のようになった。31
   
われは,クルアーンを易しく説き明した。さて,誰か悟る者があるか。32
   
ルートの民も警告を虚偽であるとした。33
   
われは砂石の嵐をかれらに送った。ルートの家族だけは別であった。黎明にかれらを救い,34
   
われからの恩恵とした。このようにわれは感謝する者に報いる。35
   
(ルートは)わが懲罰をかれらに警告したのだが,かれらはその警告に就いて疑惑の念を抱いた。36
   
そしてかれの賓客(天使)を,かれから奪おうとしたので,われはかれらの目を潰した。「さあ,わが懲罰と警告を味わえ。」37
   
あくる朝,永遠の懲罰がかれらに下った。38
   
「さあわが懲罰と警告を味わえ。」39
   
われは,クルアーンを易しく説き明した。さあ,誰か悟る者があるか。40
   
本当にフィルアウンの一族にも警告者が遣わされた。41
   
(だが)われの種々の印を虚偽であるとした。それでわれは,偉大で強力な者の一(組?)みで,かれらを捕えた。42
   
あなたがた不信心者(クライシュ族)の方が,これらの者よりも優れているのか。それとも啓典の中にあなたがたのための赦免があるのか。43
   
それともかれらは,「わたしたちは皆勝利を得る者です。」とでも言うのか。44
   
やがてこれらの人々は敗れ去り,逃げ去るであろう。45
   
いや(審判の)時は,かれらに約束された期限である。しかもその時には,最も嘆かわしい最も苦しい目にあうであろう。46
   
本当にこれらの罪を犯している者たちは,迷っているか,気違いである。47
   
火の中に顔を下にして引きずられるその日,かれらは,「猛火の触れ具合を味わいなさい。」(と言われよう)。48
   
本当にわれは凡ての事物を,きちんと計って創造した。49
   
またわが命令は只一言,瞬のようなものである。50
   
われはこれまで,あなたがた(マッカの多神教徒)の同類を滅ぼした。さて,誰か悟る者があるか。51
   
かれらの所行は,書冊に凡て記録されている。52
   
大小凡てのことが,等しく書き留められている。53
   
本当に主を畏れる者は,園と川のある,54
   
全能の王者の御許の,真理の座に(住むのである)。55