トップ » 聖クルアーン » 集合 (アル・ハシュル)
本章は,第2−3節にある物語にちなんで,集合章あるいは放逐章と呼ばれる。57章に始まる,イスラーム共同体の生活上の秩序につき教えられる第3番目の章で,ヒジュラ4年の啓示である。ユダヤ人の一氏族,バヌー・ナジールの追放の物語により,敵がいかにムスリム共同体を(哀?)切っても,それはすべてかれらの身の上にはね返り,かえって征服の日が近づきムスリム内部の結束を固めることに役立ったことが記される。またムスリムの同胞愛,日常の心構え,篤信〔タクワー〕の体得につき教えられる。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。
天にあり地にある凡てのものは,アッラーを讃える。本当にかれは偉力ならびなく英明であられる。1
かれこそは,啓典の民の中の不信心な者を,その住まいから最初に追い出し放逐された方である。あなたがたはかれらが退去するものとは考えなかった。またかれらにしても,その砦だけでアッラー(の攻撃)を防げると思っていた。だがアッラーはかれらの予期しなかった方面から襲い,かれらの心に怖気を投げ込み,それでムスリムたちと一緒になって,自分(自ら)の手で,かれらの住まいを破壊した。あなたがた見る目を持つ者よ,訓戒とするがいい。2
アッラーは,仮令かれらに対し,放逐と御決めにならなくても,必ず現世においてかれらを懲罰なされる。また,来世においては(必ず)火獄の懲罰がある。3
それはかれら(不信者)が,アッラーとその使徒に反抗したためである。誰でもアッラーに反抗するならば,本当にアッラーは懲罰に厳重であられる。4
あなたがたが,ナツメヤシの木を切り倒しても,またその根の上に立たせて置いても,それはアッラーの御許しによるもので,アッラーの掟に背く者たちを卑しめられるためである。5
またアッラーが,かれらから(取り上げて)かれの使徒に与えた物は,あなたがたが,馬やラクダを駆りたてて手に入れた訳ではない。だがアッラーは,御望みの者を使徒の権限の下に委ねられる。本当にアッラーは,凡てのことに全能であられる。6
アッラーが(敵の)村の民から得て使徒に与えた物は,アッラーの有であり,また使徒や近親,孤児,貧者,旅人のものである。それはあなたがたの中の,只富裕な者の間に専らわたらせないためである。また使徒があなたがたに与える物はこれを受け,あなたがたに禁じる物は,避けなさい。アッラーを畏れなさい。本当にアッラーは懲罰に厳重であられる。7
(戦利品は)貧困な移佳者たちのものでもある。かれらは自分の家から追われ,また財産から離れ,アッラーの恩恵と御喜びを求めて,アッラーと使徒を助けている。これらの者こそ,真実な者である。8
あなたがた信仰する者よ,アッラーを畏れなさい。明日のために何をしたか,それぞれ考えなさい。そしてアッラーを畏れなさい。本当にアッラーは,あなたがたの行うことに通暁なされる。18
あなたがたは,アッラーを忘れた者のようであってはならない。かれは,かれら自身の魂を忘れさせたのである。これらの者はアッラーの掟に背く者たちである。19
火獄の住人と楽園の住人とは同じではない。楽目の住人こそ勝利者である。20
もしもわれがこのクルアーンを山に下したならば,それはきっと遜って,アッラーを恐れて粉々に砕けるのを見るであろう。こんな譬えを,われは人間に示すのは,恐らくかれらが熟考するであろうと思うからである。21
かれこそは,アッラーであられる。かれの外に神はないのである。かれは幽玄界と現象界を知っておられ,慈悲あまねく慈愛深き御方であられる。22
かれこそは,アッラーであられる。かれの外に神はないのである。至高の王者,神聖にして平安の源であり,信仰を管理し,安全を守護なされ,偉力ならびなく全能で,限りなく尊い方であられる。アッラーに讃えあれ。(かれは)人が配するものの上に(高くおられる)。23
かれこそは,アッラーであられる。造物の主,造化の主,形態を授ける(主であり),最も美しい御名はかれの有である。天地の凡てのものは,かれを讃える。本当にかれは偉力ならびなく英明であられる。24
それで両者(ユダヤ人と偽信者)は最後に,(地獄の)業火に陥ることになり,かれらはその中に永遠に住もう。これが,不義の徒への応報である。17
(かれらは)悪魔のように人に向かって,「信仰を捨てなさい。」と言う。(その人が)一度不信心になると,かれは,「わたしはあなたと関わりはない。本当に万有の主アッラーが恐ろしいのである。」と言う。16
かれら以前にも,つい先頃,自分の行いの悪い結果を味わった者がいたが,かれらにしても同じである。(来世においても)かれらには痛ましい懲罰があろう。15
かれらが一緒でも,しっかりと防備した村とか防壁の陰でない限りは戦わないであろう。強いのはかれらの間の闘争心(だけである)。あなたはかれらが団結していると思うであろうが,その心はばらばらである。これはかれらが,知性のない民のためである。14
かれら(ユダヤ人と偽信者)の胸の中では,あなたがたの方がアッラーよりも,ずっと恐ろしいのである。これはかれらが,何も分らない民のためである。13
もしかれらが追放されても,かれら(偽信者)は,決して一緒に出て行かないであろう。もしかれらが攻められても,決して助けないであろう。もしかれら(偽信者)が助けようとしても,必ず背を向けて逃げ,結局かれらは何の助けも得られないであろう。12
あなたは,偽信者たちが啓典の民の中の不信心な仲間に言うのを見なかったのか。「もしあなたがたが追放されるなら,わたしたちは一緒に出て行くであろう。あなたがたのことに関しては,誰にも決して従わないであろう。またあなたがたがもし攻撃されるならば,わたしたちは必ず助けるであろう。」だがアッラーは,かれらが真に虚言の徒であることを立証なされる。11
かれら(移住者,援助者)の後に来た者たちは,(祈って)「主よ,わたしたちと,わたしたち以前に信仰に入った兄弟たちを,御赦し下さい。信仰している者に対する恨み心を,わたしたちの胸の中に持たせないで下さい。主よ,本当にあなたは,親切で慈悲深くあられます。」と言う。10
そして以前から(アル・マディーナに)家を持っていて,信仰を受け入れた者たちは,(移住して)かれらのもとに来た者を愛護し,またかれら(移住者〔ムハージル〕)に与えられた(戦利品)に対しても心の中で欲しがることもなく,自分(援助者〔アンサール〕)自身に先んじて(かれらに)与える。仮令自分は窮乏していても。また,自分の貪欲をよく押えた者たち。これらの者こそ至福を成就する者である。9