本章名は,1節の筆において誓うとの語にちなみ名付けられる。マッカ初期の啓示である。本章は一般に,最初の啓示96の凝血章に次いで,本章が啓示されたものといわれている。いつの世でも不信者は,真理を虚偽であるとし,英知を狂気とするのがつねであるから,アッラーは使徒ムハンマドに入びとに正義を行わせ,苦難が下る前にアッラーを念じさせるよう教えられる。
慈悲あまねく慈愛深きアッラーの御名において。 ヌーン。筆に誓けて,また書いたものにおいて誓う。
1 やがてあなたは見よう,かれらもまた見るであろう。
5 本当にあなたの主は,道から迷い去った者を,最もよく知っておられ,また導かれている者を最もよく知り尽される方である。
7 それであなたは(真理を)否認する者に従ってはならない。
8 かれらの願いは,あなたが歩み寄ることで,そうなればかれらも妥協したいのである。
9 あなたは,卑劣な誓いをたてるどんな者にも屈従してはならない。
10 富と(多くの)子女を持っているために(そうである,これらの者に従ってはならない)。
14 かれにわが印が読唱されると,「それは昔の物語です。」と言う。
15 本当にわれは,(果樹)園の持ち主を試みたように,かれらを試みた。かれらが,早朝にそれ(果物)を収穫することを誓った時に,
17 (アッラーの御望みならば)と,条件を付けることをしなかった。
18 それでかれらが眠っている間に,あなたの主からの天罰がそれを襲った。
19 それで朝には,それは摘み取られたようになった。
20 「もし収穫するのならあなたがたの畑に急ぎましょう。」
22 「今日は一人の貧乏人も,あの(果樹園)に入らせてはなりません。」
24 だがかれらがそれを見た時,言った。「わたしたちは,道を間違えている。
26 かれらの中,すこし穏やかな一人が言った。「あなたがたはどうして(主を)讃えないのかと,わたしが言ったのに。」
28 かれらは,「わたしたちの主を讃える。本当にわたしたちは不義でありました。」と言った。
29 かれらは言った。「ああ悲しい,わたしたちは本当に横柄でした。
31 主はこれに代る,更に良い(果樹園)を与えられるかもしれない。本当にわたしたちは,(悔悟して)主に嘆願します。」
32 このようなものが,(現世の)懲罰である。だが来世の懲罰は更に大きなものである。もしかれらに分っていたならば。
33 本当にアッラーを畏れる者に対しては,主の御許に喜こびの楽園があろう。
34 われは信心深い者たちを,罪人のように扱うとでもいうのか。
35 あなたがたはどうしたのか。あなたがたはどう判断するのか。
36 それともあなたがたには,学ぶに足りる啓典があるのか。
37 あなたがたが選ぶものは,何でもその啓典の中にあるのか。
38 それともあなたがたは,審判の日まで有効な誓約をわれと結んだのか。あなたがたが思慮分別することは,確かにあなたがたのものになるのか。
39 (ムハンマドよ)かれらに問え。「かれらの誰がそれを保証するのですか。」
40 または,かれらは(主に)配するものがあるのか。かれらが正しいのなら,その配するものを連れて来させなさい。
41 脛が,現わにされる日(を思いなさい)。かれらはサジダするよう求められる。だがかれらには出来ないであろう。
42 かれらは目を伏せ,屈辱を被るであろう。サジダするよう,確かにかれらは呼びかけられていた。その時五体満足なのに(拒否した)。
43 そこでこの御言葉(クルアーン)を虚偽であるとする者をわれに任せよ。われはかれらが気付かない方面から,一歩一々(堕落に)導き,
44 かれらを猶予するであろう。本当にわれの計略は強く確かである。
45 それともあなたがかれらに報酬を求め,それでかれらは負担を課せられたのか。
46 また幽玄界がかれらの手元にあり,それでかれらは(それを)書き下すことが出来るのか。
47 だから忍耐して,あなたの主の命令を待て。魚の友のようであってはならない。苦しさの余り(かれが)叫んだ時(のように)。
48 主からの恩恵がかれに達しなかったならば,かれは罪を負わされ,不面目に不毛の地に捨てられたであろう。
49 このように主は,かれを選び正義の徒の一人となされた。
50 不信心者は警告を聞く時,その(物凄い)目付きで,あなたを凡んど倒れんばかりにする。かれらは言う。「本当にかれは憑かれた者です。」
51 だが,この(クルアーン)こそは,万有のための訓戒に外ならない。
52